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法務の窓 改正信託法

2007.6.1発行 No.8
改正信託法条文ポイント解説[第6章 信託の変更、併合および分割]
本号では、信託の変更、併合および分割についての解説をしていきます。

1.信託の変更(149条・150条)

(1)意義
 信託は、委託者、受託者および受益者の合意によって変更することができます。
 現行の信託法23条は、信託財産の管理権が濫用されることを防止するために、信託行為の当時予見することができなかった特別の事情が生じて、受益者の利益に適合しなくなった場合にのみ、裁判所の許可を得て信託の変更をすることができると定めています。
 しかし、関係当事者全員が信託の変更を望む事情があるにもかかわらず柔軟な変更ができないことは、むしろ受益者の利益に反する結果にもなり、実務の要求に十分対応できるものとは言えません。そこで、改正信託法は、原則として、委託者、受託者および受益者の合意によって信託を自由に変更することができるものとしました。

(2)手続
  1. 合意

  2.  原則として、委託者、受託者および受益者の合意によって変更することができます。
     ただし、例外として、信託の変更が設定当初の信託の目的に反しないことが明らかであるときは、委託者の同意は不要です。また、受託者の利益を害しないことが明らかであるときは、受託者の同意は不要です。
     さらに、信託の目的に反せず、かつ受益者の利益に適合することが明らかであるときは、委託者と受益者の同意はともに不要であり、また信託の目的に反せず、かつ受託者の利益を害しないことが明らかである場合は、委託者と受託者の同意はともに不要です。
  3. 変更を命ずる裁判

  4.  信託行為の当時予見することができなかった特別の事情が生じて、受益者の利益に適合しなくなった場合、委託者、受託者または受益者のいずれかの申し立てにより、裁判所は信託の変更を命ずることができます。


2.信託の併合(151条〜154条)

(1)意義
 信託の併合とは、受託者を同一とする2つ以上の信託の信託財産の全部を1つの新たな信託の信託財産とすることをいいます(2条10号)。
 従来から、信託と法人の類似性は指摘されていたところですが、改正信託法では、会社法における合併・会社分割の制度と同様の制度を設けることにより、手続上も法人に近づくことになりました。
  1. 合意

  2.  原則として、委託者、受託者および受益者の合意によって信託の併合を行うことができます。
     ただし、例外として、信託の併合が設定当初の信託の目的に反しないことが明らかであるときは、委託者の同意は不要です。さらに、信託の併合が信託の目的に反せず、かつ受益者の利益に適合することが明らかであるときは、委託者と受益者の同意はともに不要です。
  3. 債権者保護手続

  4.  信託の併合は、信託に関して債権を有する者に影響を及ぼす可能性があります。そこで、債権者には、受託者に対して、信託の併合について異議を述べることができる機会が与えられています。
     受託者は、1ヶ月を下らない一定の期間を定めて、信託の併合について官報に公告し、かつ知れたる債権者に対して個別に催告しなければなりません。
     ただし、例外として、信託の併合をしても債権者を害するおそれのないことが明らかであるときは、債権者は異議を述べることはできず、この場合には債権者保護手続を経る必要はありません。
  5. 受益権者保護手続

  6.  受益者が多数存在する信託の場合、受益者の同意については受益者の多数決によって決する旨を信託契約等において定めることが可能です。このような定めがある場合、信託の併合に賛成しなかった受益権者は、受託者に対して、受益権を買い取るよう請求することができます(103条)。
  7. 効果

  8.  信託の併合がなされると、従前の信託の信託財産責任負担債務(受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務(2条9項)と信託財産限定責任負担債務(受託者が信託財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う信託財産責任負担債務)は、それぞれ併合後の信託の信託財産責任負担債務および信託財産限定責任負担債務となります。


3.信託の分割(155条〜162条)

(1)意義
 信託の分割には、吸収信託分割と新規信託分割があります。吸収信託分割とは、ある信託の信託財産の一部について受託者を同一とする他の信託の信託財産として移転することをいい、新規信託分割とは、ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする新たな信託の信託財産として移転することをいいます(2条11項)。

(2)信託の分割の手続等
  1. 合意

  2.  原則として、委託者、受託者および受益者の合意によって信託の分割を行うことができ、また例外として当事者の一部の合意が不要となる場合があることは信託の併合の場合と同様です。
  3. 債権者保護手続

  4.  信託の分割の場合も、信託の併合の場合と同様に信託に関して債権を有する者に影響を及ぼすことがあることから、債権者保護手続が規定されています。
  5. 受益権者保護手続

  6.  反対受益権者が受託者に対して受益権を買い取るよう請求することができる手続についても信託の併合の場合と同様です。
  7. 効果

  8.  信託の分割がなされると、合意の内容に応じて、信託財産責任負担債務と信託財産限定責任負担債務は、吸収信託分割の場合は承継される信託へ、新規信託分割の場合は新たな信託へ、それぞれ免責的に移転します。

(文責 熱田久人)
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