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| 2007.4.27発行 No.4 |
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改正信託法条文ポイント解説[第3章 受託者等 その1]
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本号と次号では、2回にわたり受託者についての解説をしていきます。
〜 第3章 受託者等 〜
受託者とは、信託契約による信託や遺言による信託等の信託行為の定めに従い、信託財産に属する財産の管理または処分およびその他の信託の目的達成のために必要な行為をなすべき義務を負う者を言います(2条5号)。
1. 受託者の権限(26〜28条)
(1)権限の範囲
受託者は、原則として信託財産の管理または処分に限らず、信託目的の達成のため必要な行為をすることができます。そうでなければ、信託目的に定められた任務を適切に果たせなくなってしまうからです。たとえば、信託財産に抵当権を設定して借入することもできます。ただし、信託行為の定めにより、受託者の行為に制限を加えることも可能です。
(2)権限違反行為の取消し
受託者が権限外の行為をした場合でも、当該行為は有効に成立しますので、受益者に不利益になることがあります。そこで、受託者が権限外の行為を行った場合、当該権限外行為の相手方が、当該行為が受託者の権限外であることを知っていたか、または重大な過失により知らなかったときは、受益者は、当該行為を取り消すことができます。
(3)第三者への委託
受託者は、必ずしもすべての分野について万能とは限りません。ときにはその道のプロに任せたほうが、受益者にとって利益となる場合もあります。そこで、信託行為に定めがある場合、信託目的に照らして相当な場合、またはたとえ第三者に委託してはならない旨の定めがあっても信託目的に照らしてやむをえない事由がある場合は、受託者は、信託事務の処理を第三者に委託することができます。
2. 受託者の義務等(29〜39条)
(1)受託者の注意義務
受託者は、信託の目的に従い、善良な管理者の注意義務をもって、信託事務を処理しなければなりません。「善良な管理者の注意義務」とは、自己所有財産(固有財産)を管理する場合の注意義務よりも高度な注意義務を要する、という意味です。
なお、注意義務の程度は、信託行為の定めにより加重することも軽減することもできます。ですから、信託契約により受託者の負担を軽減し、受託しやすくすることが可能です。もっとも、たとえ信託契約で定めても、注意義務を完全に排除することはできません。
(2)忠実義務、利益相反取引および競業取引の制限
受託者は、もっぱら受益者の利益となる行為をしなければなりませんから、原則として、受託者と受益者の利益が衝突する行為をすることはできません。たとえば、受託者が、信託財産に属するマンションの管理を、受託者が代表取締役に就任し
ている不動産管理会社に信託事務として委託することは、原則として禁止されます。例外として、受託者と受益者の利益が衝突する行為であっても、受益者の不利益とならない行為は禁止されません。たとえば、信託財産に属するマンションを適正な
売買価格で受託者に売却することは、必ずしも禁止される行為には該当しません。
(3)公平義務
受益者が2人以上ある信託では、受託者は、どの受益者に対しても公平に職務を行う義務がありますので、特定の受益者を有利に扱うことはできません。
(4)分別管理義務
受託者は、信託財産と受託者の固有財産等信託財産に属さない財産とを分別して管理しなければなりません。具体的には、登記や登録ができる財産については信託の登記等をし、登記や登録ができない財産のうち金銭以外の動産については外形上区別することができる状態で保管し、金銭については帳簿により計算をして、信託財産と信託財産に属さない財産とを分別して管理しなければなりません。
(5)信託事務を処理する第三者の選任・監督義務
第28条により、受託者には信託事務の処理を第三者へ委託できる権限がありますが、これにともない、受託者が信託事務の処理を第三者へ委託した場合には、受益者に対して一定の義務を負うこととされています。
(6)報告および帳簿等の作成義務
受託者は、定期的に一定の情報を受益者に報告しなければなりません。また信託財産の種類に応じて、貸借対照表等一定の書類を作成・保存しなければなりません。
なお、受益者等による濫用的な書類の閲覧を防止するため、一定の場合、受託者は書類の閲覧請求を拒否することができます。
3. 受託者の責任等(40〜47条)
(1)受託者の損失てん補責任
受託者がその任務を怠ったことによって、信託財産に損失が発生した場合は、受益者は、その損失のてん補を請求することができます。この場合、受託者には任務を怠ったことについて故意または過失が必要であると解されています。
(2)受益者による受託者の行為の差し止め
受託者が法令もしくは信託行為の定めに違反する行為をし、または違反行為をするおそれがある場合において、その行為によって信託財産に著しい損害が発生するおそれがあるときは、受益者は、その行為をやめるよう請求することができます。
この規定は、受託者に十分な資力がない場合や信託による処分行為の相手方が善意である場合、受益者の救済が不十分になる可能性があるため、事前の救済手段として改正信託法において創設されました。なお、この差し止め請求は、裁判手続きによらないで請求することもできます。
4. 受託者の費用、報酬(48〜55条) (1)費用償還
受託者は、信託事務の処理に際して必要な費用を受託者が支出したときは、信託財産からその費用と利息を支払ってもらうことができます。信託財産が負担すべき必要経費を、受託者が立替払いをしたのですから当然と言えます。なお、費用の償還に
ついて信託財産からではなく、受益者に支払ってもらうには、受託者と受益者との個別の合意が必要になります。
(2)信託報酬
受託者が受けるべき信託報酬は、原則として無報酬です(民法648条1項)。報酬が発生するのは、信託財産から信託報酬を受ける旨の特約がある場合と受託者が営業として信託を引き受けた場合の二つです。また、具体的な報酬金額は、信託行為で定
められている場合はその額であり、その定めがない場合は相当額ということになります。つまり、具体的な報酬額の定めがない場合でも、受託者は、相当額を信託報酬として受けることができます。ただしこの場合、受託者が自分で勝手に決めた額を「相当額」と主張して、いわゆるお手盛りにする可能性がありますので、受託者には、信託報酬額とその算定根拠を、受益者に通知する義務が課せられています。
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| (文責 石井孝幸) |
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