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法務の窓 改正信託法

2007.4.20発行 No.3
改正信託法条文ポイント解説[第1章 総則/第2章 信託財産等]
 本号より改正信託法の条文について条文の順序に従ってポイントの解説をしていきます。
なお、文中の条文については、特別のことわりがない場合は改正信託法(平成18年法律108号)の条項を指します。

〜 第1章 総則 〜
  1. 定義(2条)
     信託とは、個人や企業が委託者となって、その所有する財産を、信託行為(信託契約、遺言等)によって、一定の目的(信託目的)を定めて、信頼できる受託者に対して財産を移転し、信託目的に従って、受益者のためにこの財産(信託財産)を管理・運用し、そこから生じた利益を受益者に給付することを基本的な仕組みとしています。
  2. 信託の方法(3条)
     信託設定の方法には、次の3つがあります。
    (1)信託契約の締結
      たとえば、ある土地を所有する者(委託者)が受託者に対して、当該土地の譲渡、担保権の設定等の財産を処分する旨の契約、つまり、受託者が一定の目的に従って財産の管理・処分等目的達成に必要な行為をなすべき旨の契約を締結する方法です。
    (2)遺言信託
      委託者が単独行為である遺言を通じて信託を設定する方法で、一般に遺言信託と呼ばれています。なお、遺言による信託行為が有効に成立するためには、民法の方式(民法960条以下)によることになり、書面性が要求されます。
    (3)自己信託
      改正信託法において、新たな信託の方法として認められたもので、委託者が自分の一定の財産の管理・処分を受託者として自らすべき旨の意思表示を公正証書等の書面によってする方法とされています。たとえば、障害を持つ子に親がその財産を贈与しようとする場合、子本人による管理は困難であるところ、自己信託を利用して、委託者自身の倒産による財産の散逸の危険を避けつつ、財産の管理は自ら受託者となって行うことで、適切な財産の管理を行うことが可能になります。
  3. 信託の効力発生時期(4条)
     信託は、その方法により以下の時期に効力が発生します。
    (1)信託契約 ・・・  信託契約の締結の時
    (2)遺言信託 ・・・ 遺言の効力発生の時
    (3)自己信託 ・・・  公正証書によってなされる場合は証書作成の時
    公正証書等以外の書面によってなされる場合は受益者への確定日付ある通知がなされた時
  4. 禁止事項等(7〜10条)
    (1)受託者不適格者(7条)
     未成年者、成年被後見人、被保佐人は受託者になることはできません。
    (2)受託者利益享受(8条)
     受託者が受益者として信託の利益を享受する場合を除き、受託者が第三者の名義で受益権の全部を保有して信託の利益を享受することはできません。
    (3)脱法信託(9条)・訴訟信託(10条)
     信託財産の性格上、ある者が一定の範囲内で受益者になり得ないような権利能力を制限する法令を回避するための信託はすることができません。また、訴訟行為を行うことを主たる目的とするための信託はすることができません。
  5. 詐害信託の取消し等(11・12条)
     詐害信託の取消権とは、委託者が信託をすることが委託者の債権者を害する場合に、委託者の債権者が裁判所に信託の取消しを請求する権利であり、民法424条の詐害行為取消権の信託に関する特則と位置けられています。また、詐害信託の取消権の行使に関する特則が整備されたことに伴い、詐害信託の否認に関する特則が設けられています。
〜 第2章 信託財産等 〜
  1. 信託財産の対抗要件(14条)
     登記・登録できる財産については、信託財産に属することを登記・登録をしなければ第三者に対抗することはできません。なお、有価証券については、一般の動産と同様に信託の公示なくして第三者に対抗することができると解されます。
  2. 信託財産の範囲(16条〜19条)
     信託財産の範囲は以下のとおりです。
    (1)信託行為において信託財産に属すべきものと定められた財産
    (2)信託財産に属する財産の管理、処分、滅失、損傷等により受託者が得た財産
  3. 信託財産責任負担債務(21条)
     信託財産に属する財産は、形式的に受託者に帰属するものの、実質的には受益者のために管理・処分されるべきものであるため、受託者の債権者による信託財産に属する財産への強制執行等は、原則として禁止され、例外的に、一部の債権についてのみ、強制執行が可能とされています。この信託財産に属する財産への強制執行等が可能な債権にかかる債務が信託財産責任負担債務ということになり、その範囲は、21条1項において具体的規定を設けて、内容を明らかにしています。
  4. 信託財産に関する制限等
    (1)混同(20条)
      たとえば、甲土地に対して設定された地上権を信託財産として、受託者Xに対して信託の設定を行ったときに、その後、仮にX個人が甲土地の所有権を取得した場合であっても、両権利間での混同は生じないという混同の例外を定めています。
    (2)相殺(22条)
      信託財産に対する強制執行等の制限を実効的なものとするため、第三者からの一定の範囲の相殺については制限するとともに、受託者からの相殺は、利益相反行為の一般規定に委ねて(31条)、本条の適用範囲外としています。
    (3)強制執行等(23条)
      原則として、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分、担保権の実行、国税滞納処分等をすることはできず、例外的に信託財産責任負担債務にかかる債権に基づく場合にだけ許容されます。そして、この制限に違反してされた強制執行等に対しては、受託者または受益者は、異議を主張することができるとされています。 
    (4)破産等(25条)
      一般に、信託財産は独立性を有し、受託者の倒産リスクから遮断されているとされています(信託の主要機能の1つである倒産隔離機能)。改正信託法では、以下のとおり信託と受託者の倒産手続との関係を整理し、明文化が図られています。
    1. 信託財産と受託者の破産財団との関係では、信託財産は、破産財団に属しません。
    2. 信託に関連する債権と受託者の破産手続との関係では、受益債権・信託債権であって受託者が信託財産に属する財産のみをもって、その履行の責任を負うものは、破産債権となりません。
    3. 信託債権と免責許可の決定との関係では、信託債権にかかる債務の免責は、信託財産との関係においては、その効力を主張できません。
(文責 仁平康夫)


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