本号では、限定責任信託の設定・受託者の変更・限定責任信託の終了の登記事項について解説します。
なお、本号の内容は、平成19年8月20日付法務省民商第1680号の通達に基づいております。
1.限定責任信託の定めの登記
(1)概説
信託行為において当該信託が限定責任信託である旨を定めた場合、限定責任信託は、改正信託法232条の定めるところにより登記することによって、その効力を生じます。
限定責任信託の定めは、信託債権者にとっての責任財産を限定するため、法令に定める一定事項の公示を、その効力発生要件としたものです。
(2)登記すべき事項
限定責任信託の定めの登記は、次の事項を登記しなければなりません。
- 限定責任信託の目的
- 限定責任信託の名称
- 受託者の氏名または名称および住所
- 限定責任信託の事務処理地
- 信託財産管理者または信託財産法人管理人が選任されたときは、その氏名または名称および住所
- 信託の終了についての信託行為の定めがあるときは、その定め
(3)登記記録例
| 限定責任信託の名称 |
甲野限定責任信託 |
| 限定責任信託の事務処理地 |
東京都千代田区大手町○丁目△番□号 |
| 限定責任信託の効力発生日 |
平成19年10月10日 |
| 限定責任信託の目的 |
信託不動産の管理運用 |
| 受託者等に関する事項 |
東京都千代田区麹町○丁目△番地□ 受託者 乙山信託銀行株式会社 |
| 限定責任信託の終了の事由 |
当限定責任信託は、平成30年8月21日に終了する。 |
| 登記記録に関する事項 |
設定 |
| 平成19年10月10日登記 |
2.受託者に関する変更の登記
(1)概説
a.任務の終了
受託者は、イ) 信託の清算の結了、ロ) 死亡、ハ) 後見開始または補佐開始の審判を受けたこと(個人が受託者の場合)、ニ) 破産手続き開始の決定を受けたこと、ホ) 合併以外の理由により解散したこと(法人が受託者の場合)、ヘ) 辞任、ト) 解任、チ) 信託行為に定めた事由、によりその任務は終了します(条文ポイント解説5「受託者等」参照)。
b.新たな受託者の選任
受託者の任務が終了した場合の新たな受託者の選任は、イ) 信託行為に新たな受託者に関する定めがあればそれにより、ロ) 定めがない、あるいは新受託者として指定された者が信託の引受をしないときは、委託者と受益者の合意により、ハ) ロ)の合意が整わないときは、申立による裁判所による選任によって行われます。
(2)登記すべき事項
新受託者の就任登記については、イ) 新受託者の氏名または名称および住所、ロ) 就任年月日および登記原因を登記します。旧受託者の任務の終了については、イ) 終了年月日およびロ) 任務が終了した旨を登記します。
なお、受託者が委託者および受益者の同意を得て辞任した場合、新受託者または信託財産管理者の選任があるまで、任務終了の登記は受理されません。新受託者または信託財産管理者が信託事務の処理をすることができるまでは、前受託者が引き続き受託者としての権利義務を承継するからです。ただし、受託者が2人以上ある信託の場合は、新受託者等の選任がなくても、辞任の登記は受理されます。任務終了時に存する信託に関する権利義務は、もう一方の受託者へ当然に承継されるからです。
また、旧受託者の終了年月日から新受託者の就任年月日までの期間が1年を超えている場合、新受託者の就任の登記は受理されません。当該信託はすでに終了しているからです。
(3)登記記録例
a.就任
| 受託者等に関する事項 |
東京都千代田区麹町○丁目△番地□ 受託者 乙山信託銀行株式会社 |
| 平成19年10月10日就任 |
登記原因の記載は、信託行為の定めまたは委託者および受託者の合意による選任の場合は「就任」、新受託者選任の裁判があった場合は「○○地方裁判所の選任」となります。なお、選任の裁判があった場合においても、嘱託登記による旨の規定がありませんから、この登記は申請によることとなります。
b.任務の終了
| 受託者等に関する事項 |
東京都大田区蒲田○丁目△番□号 受託者 乙野 次郎 |
| 平成19年10月10日死亡 |
受託者の氏名または名称および住所には、登記の抹消を表す下線が引かれます。
登記原因の記載としては、「辞任」「死亡」「解散」「退任」などがあります。
3.限定責任信託の終了の登記
(1)概説
信託は、改正信託法163条もしくは法164条第1項および第3項の規定により終了します(条文ポイント解説9「信託の終了等」参照)。
また、当事者の合意または申立による裁判により限定責任信託の定めを廃止する旨の信託の変更によっても終了します。
信託の終了または、限定責任信託を廃止する旨の信託の変更があった場合、限定責任信託の終了の登記の申請を要します。
(2)登記すべき事項
登記すべき事項は、限定責任信託の終了の旨ならびにその事由およびその年月日です。
(3)登記記録例
a.信託の目的を達成した場合
| 終了 |
平成20年10月31日信託の目的を達成したことにより終了 |
| |
平成20年11月7日登記 |
b.委託者および受託者の合意により終了した場合
| 終了 |
平成20年10月31日委託者及び受託者の合意により終了 |
| | 平成20年11月7日登記 |
c.限定責任信託の定めを廃止した場合
| 終了 |
平成20年10月31日限定責任信託の定めの廃止により終了 |
| | 平成20年11月7日登記 |
なお、受託者に関する登記は、終了の登記により自動抹消されます。
4.関連条文
改正信託法216条・232条・235条