本号から4回連続で、改正信託法によって新しく創設された制度である「限定責任信託登記」について解説します。まず第1回目である本号では、「限定責任信託の登記簿」について解説します。
1.登記制度の整備
限定責任信託とは、信託財産責任負担債務について受託者が信託財産のみをもってその履行の責任を負う信託ことです(キーワード解説3[限定責任信託]参照)。つまり、受託者は、信託財産に属する財産を超えては、信託事務から発生した債務を返済する義務がありません。逆に言えば、信託事務に対する債権者は、信託財産を越えては返済が受けられないこととなり、信託債権者に対して重大な利害関係を与える制度と言えます。
そこで、受託者等限定責任信託に関する重要な事項を公示して、その信用の維持を図り、同時に取引きの安全に資するために、限定責任信託登記制度が整備されました。信託に関するありとあらゆる情報を公開すれば、それだけ取引きの安全に資することとなりますが、他方公開する側の負担もそれだけ大きくなり、また公示制度にも限界があります。従って、何を重要な事項として公示するかは、改正信託法をはじめとした法令により規定されています。
2.記録すべき事項
限定責任信託の登記簿は、以下のとおり、5つの区に分けられ、記録すべき事項が規定されています。
(1)名称区
名称区における記録すべき事項は、以下のとおりです。
- 限定責任信託の名称(例えば、「鈴木限定責任信託」等)
- 限定責任信託の事務処理地
- 限定責任信託の効力発生日
(2)目的区
目的区における記録すべき事項は、以下のとおりです。
限定責任信託の目的(例えば、「信託不動産の管理運用」等)
(3)受託者区
受託者区における記録すべき事項は、以下のとおりです。
- 受託者および受託者職務代行者(清算受託者および清算受託者職務代行者を除く。)
- 信託財産管理者
- 信託財産法人管理人
- 会計監査人
- 清算受託者および清算受託者職務代行者
- 職務の執行停止
- その他受託者等に関する事項
(4)信託状態区
信託状態区における記録すべき事項は、以下のとおりです。
- 信託終了事由の定め(例えば、「当限定責任信託は、平成30年8月21日に終了する。」等)
- 会計監査人設置信託である旨
- 信託終了に関する事項(登記記録区に記録すべき事項を除く。)(例えば、「平成21年4月2日委託者および受託者の合意により終了」等)
- 破産に関する事項(受託者区および登記記録区に記録すべきものを除く。)
(5)登記記録区
登記記録区における記録すべき事項は、以下のとおりです。
- 登記記録を起こした事由および年月日(例えば、「設定」等)
- 登記記録を閉鎖した事由および年月日(例えば、「平成19年12月3日東京都新宿区北新宿○丁目△番□号に事務処理地変更」等)
- 登記記録を復活した事由および年月日
3.登記事項証明書等
限定責任信託登記については、株式会社等と同じく、手数料を納付して請求すれば登記事項証明書や登記事項要約書の交付が受けられます。但し、限定責任信託は法人ではないため、代表者事項証明書の交付請求はできません。
交付手数料は、登記事項証明書は1通につき1,000円(10枚まで)、登記事項要約書は1記録につき500円(5枚まで)となります。
4.関連条文
(1)限定責任信託登記規則
8条(商業登記規則の準用規定)、別表(登記記録)
(2)商業登記規則
19条・20条・30条・31条(登記事項証明書、登記事項要約書)