本号では、各種信託登記の申請人について解説していきます。
1.代位による信託登記の申請人
信託財産の管理者である受託者は、信託の目的達成のために必要な行為をなすべき義務を負います。そのため、信託財産が不動産であるならば、信託した不動産について信託財産であることを第三者に対抗するための登記をする義務
があります。それにもかかわらず、受託者が信託の登記をしないのであれば、財産を信託した委託者や信託財産に受益権を有する受益者は、不利益をこうむることになります。
そこで、受託者が信託の登記をしない場合には、委託者または受益者は、受託者に代わって信託の登記の申請人となって登記をすることができます。なお、信託法の改正により、信託の変更登記の申請についても、委託者または受益者は、
受託者に代わって申請することができるようになりました。
2.受託者の任務終了による変更登記の申請人
(1)申請による信託変更の登記
受託者の任務が終了した場合、旧受託者から新受託者への権利移転または変更登記をしなければなりません。しかし、死亡や後見開始の審判等により旧受託者の任務が終了した場合は、旧受託者から新受託者への権利移転等の登記を、旧受託者に申請させることは困難です。
そこで、次の事由により受託者の任務が終了した場合は、新受託者または他の共同受託者が単独で申請人となって、旧受託者から新受託者への権利移転または変更登記を申請することができます。
- 死亡
- 後見開始もしくは保佐開始の審判
- 破産手続開始の決定
- 合併以外の理由による法人の解散
- 裁判所もしくは主務官庁の解任命令による終了
(2)職権による信託変更の登記
受託者について一定の事由が生じた場合は、次のような新受託者への権利移転または受託者の氏名・住所の変更登記が申請されることとなり、これに基づき登記官が当該権利移転または変更の登記をするときは、信託の登記事項である信託目録(改正信託法と登記2参照)に記載されている受託者についても当然に同様の変更をする必要があるため、登記官は、職権で当該変更登記をすべきこととされています。
- 死亡、辞任、解任等、受託者の任務終了事由に該当したことによる権利の移転登記
- 受託者が二人以上いる場合において、そのうちの一人が受託者の任務終了事由に該当したため、他の受託者がその者の権利義務を当然承継したことによる権利の変更登記
- 受託者である登記名義人の氏名もしくは名称または住所についての変更、更正登記
(3)嘱託による信託変更の登記
次のような事由が生じた場合には、裁判所書記官もしくは主務官庁は、信託の変更登記を嘱託しなければなりません。
- 受託者の解任
- 信託管理人もしくは受益者代理人の選任もしくは解任
- 信託の変更命令
3.信託における共同申請の特則
信託登記の申請人は、受託者(登記名義人)の単独申請とするのが通常です(改正信託法と登記3参照)。しかし、信託登記といえども、下記の登記については共同申請となります。
(1)受託者の固有財産に属する財産から信託財産に属する財産となった場合の権利変更登記(自己信託による場合を除く。)
(2)信託財産に属する財産から受託者の固有財産に属する財産となった場合の権利変更登記
(3)一の信託の信託財産に属する財産から受託者を同一とする他の信託の信託財産に属する財産となった場合の権利変更登記
上記各登記は、権利移転の登記と異なり、権利の登記名義人に変更がない点で共通しています。つまり、これらの受託者の行為はいずれも利益相反行為に該当することとなるのです。従いまして、受益者の利益を保護し登記の真正を担保するためには、共同申請によるべきと考えられます。
しかし、権利の登記名義人に変更がないのですから、誰が登記権利者となり登記義務者となるのかが問題となります。そこで、改正不動産登記法第104条の2第2項により、下記のように、登記権利者および登記義務者が規定されています。
- 上記(1)の場合は、受益者を登記権利者とし、受託者を登記義務者とする。
- 上記(2)の場合は、受託者を登記権利者とし、受益者を登記義務者とする。
- 上記(3)の場合は、当該他の信託の受益者および受託を登記権利者とし、当該一の信託の受益者および受託者を登記義務者とする。
これらはいずれも、信託の登記がなされることは、受益者に有利であり受託者に不利益であるとの考えに基づいています。
4.関連条文
(1)信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
71条(不動産登記法の一部改正)
(2)不動産登記法
99条(代位による信託の登記の申請)、100条(受託者の変更による登記等)、
101条(職権による信託の変更の登記)、102条(嘱託による信託の変更の登
記)、103条(信託の変更の登記の申請)、104条の2第2項(権利の変更の登
記等の特則)