本号では、「不動産信託の登記申請(自己信託)」について解説していきます。なお、現時点においては、改正不動産登記規則や改正不動産登記令が未確定でございますので、本稿中意見にわたる部分は筆者の個人的見解でありますことを、あらかじめお断りしておきます。
1.通常の不動産信託登記との相違点
改正信託法では新たに自己信託が認められるようになりました。自己信託とは、自己の固有財産につき、自らを受託者として信託を設定することをいいます(キーワード解説1参照)。
委託者と受託者が異なる通常の信託であれば、信託財産となる不動産の名義を委託者から受託者名義へ変更するため所有権移転登記申請が必要となり、この所有権移転登記と信託登記とを同時に申請することとなります(改正信託法と登記3参照)。
他方、委託者と受託者が一致する自己信託では、名義変更する必要がありませんから所有権移転登記を申請する余地はありません。しかし、自己信託を設定することにより、信託の目的となる財産の性質が、受託者の固有財産から信託財産に変更したととらえることができますので、所有権移転登記にかえて、当該財産が受託者の固有財産から信託財産になった旨の所有権変更登記を申請すべきこととなり、この所有権変更登記と信託登記とを同時に申請することとなります。
2.登記申請
通常の信託登記の場合は、委託者と受託者の共同申請により所有権移転登記を申請し、信託登記を受託者が単独で申請しますが(改正信託法と登記3参照)、委託者と受託者が一致する自己信託の場合は、申請当事者が自己のみであるため、所有権変更登記を共同で申請することができません。そこで、自己信託の場合は、共同申請の例外として、受託者が単独で所有権変更登記を申請することができることとされています。
3.添付書類
添付書類につきましては、以下のとおりとなります。
(1)登記原因証明情報として、公正証書もしくはその他の書面または電磁的記録ならびに受益者に対し信託がなされた旨および内容が通知された確定日付ある証書
自己信託の意思表示は、必ず、公正証書その他の書面または電磁的記録によってしなければならず、これらの書面等を登記原因証明情報として添付することとなります。
(2)登記識別情報または登記済証
委託者が、当該財産の権利を取得した時の登記識別情報または登記済証を添付します。
(3)印鑑証明書
発行日から3か月以内のもので、個人の場合は市区町村長発行のもの、法人の場合は登記所発行のものを添付することとなります。
(4)代理権限証明証書
委任状や代表者の資格証明書を添付します。なお、これらの書面が官公署作成にかかる場合は、発行日から3か月以内のものが必要です。
(5)信託目録
(改正信託法と登記2参照)
4.登記申請書の記載例
上記を前提に検討しますと、改正後の不動産登記法における所有権の変更と信託登記を申請する場合の申請書の書式は、次のようになるものと考えられます。
| 登記の目的 |
所有権変更及び信託 |
| 原因 |
平成○年○月○日信託 |
| 権利者(委託者兼受託者) 甲 |
| 添付資料 |
登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書
代理権限証書 信託目録
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4.関連条文
(1)改正信託法
3条(信託の方法)、4条(信託の効力の発生)、附則2項(自己信託に関する経過措置)
(2)信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う法務省関係政令等の整備等に関する政令
42条
(3)不動産登記法
98条3項
(4)不動産登記令
5条
(5)不動産登記規則
47条