改正信託法条文ポイント解説の最終回である本号では、「第10章 受益証券発行限定責任信託の特例」、「第11章 受益者の定めのない信託の特例」、「第12章 雑則」、「第13章 罰則」、「附則」について解説をしていきます。
1.受益証券発行限定責任信託の特例(248〜257条)
受益証券を発行する限定責任信託では、会社法と同様に負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である信託について、会計監査人を置かなければなりません。
2.受益者の定めのない信託の特例(258〜261条)
従来、受益者の定めのない信託は、公益性がある場合でなければ認められませんでしたが、改正信託法では、一般的な信託でも受益者の定めのない信託について特例として認めることとされました。
(1)要件
受益者の定めのない信託は、以下の要件を充足する必要があります。
- 自己信託は不可
- 信託期間中に受益者の定めを設けることは不可
- 遺言信託の場合は、信託管理人を設置
(2)存続期間
受益者の定めのない信託の存続期間は、20年を超えることができません。
(3)読替
改正信託法は、受益者が存在することを前提に規定されています。そのため、受益者の定めのない信託については、一般の信託の規定を以下のように読み替える必要があります。
- 「受益者の利益を害しない」を「信託の目的の達成の支障とならない」
- 「受益者」を「委託者」
- 「信託の目的に反しないことおよび受益者の利益に適合すること」を「信託の目的の達成のために必要であること」
- 「信託管理人」を「信託管理人または委託者」
3.雑則(262〜266条)
(1)非訟
「遺言信託における裁判所による受託者の選任」や「特別の事情による信託の終了を命ずる裁判」などの裁判所の関与を要する場合には、通常の訴訟手続ではなく、非訟事件の手続によるものとされています。
(2)公告等
- 一般的な公告
改正信託法にもとづく公告を法人である受託者が行う場合には、当該法人が定款で定めた公告の方法によるものとされました。
- 債権者保護手続の特則
信託財産責任負担債務を負う受託者である法人が組織変更、合併等にあたって債権者保護手続を要する場合でも、信託財産責任負担債務の債権者は、異議を述べることができる債権者には含まれません。
4.罰則(267〜271条)
(1)受益証券発行限定責任信託の受託者等の贈収賄罪
受益証券発行限定責任信託の受託者およびその他の一定の当事者が、その職務に関して賄賂を収受等したときには、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
また、賄賂の収受等にもとづく不正行為や不作為については、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます。
(2)過料
以下のような行為をした場合には、100万円以下の過料に処せられます。
- 受託者等の一定の当事者が対象となる場合
- 所定の公告、通知を怠ったとき
- 所定の登記を怠ったとき
- 所定の報告、開示を怠ったとき。
- 当事者以外でも過料の対象となる場合
- 限定責任信託の名称中に限定責任信託という表記をしなかったとき
- 限定責任信託の名称を冒用したとき
5.附則
(1)施行日
改正信託法は、公布の日である平成18年12月15日から平成20年6月15日までの間に施行されます。現時点での見通しとしては、平成19年9月からの施行が有力です。
(2)経過措置
- 自己信託
自己信託に関する規定については、改正信託法施行の日から起算して1年を経過する日までは、適用されません。つまり施行後1年間は自己信託の利用はできないということになります。
- 受益者の定めのない信託
受益者の定めのない信託(公益信託を除く)の受託者になることができる者は、当分の間、信託事務を適正に処理することのできる一定の財産的基礎、人的構成を有する者だけに限定されています。
次回からは、改正信託法において重要であると思われる用語をピックアップして解説する「キーワード解説」をシリーズでお届けいたします。