本号では、限定責任信託の特例についての解説をしていきます。
1.総則(216条〜221条)
(1)意義
限定責任信託とは、受託者が信託に関して負担する債務について信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託をいいます。
(2)要件
- 効力要件
限定責任信託は、受託者と取引関係に入ろうとする第三者の予見可能性を確保するため、以下の事項を登記することによって効力を生じます。
- 限定責任信託の目的
- 限定責任信託の名称
- 受託者の氏名または名称および住所
- 限定責任信託の事務処理地
- 信託財産の管理または処分の方法
- その他
- 対抗要件
限定責任信託は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができません。
また、登記すべき事項につき故意または過失によって不実の登記をした場合、その事項が不実であることを善意の第三者に対抗することはできません。
(3)名称規制等
- 名称規制
限定責任信託は、限定責任信託という文字を用いた名称を付けなければなりません。
- 明示義務
限定責任信託は、取引上の第三者を保護するため、取引の相手方に限定責任信託である旨を明示しなければ、当該取引の相手方に主張することができません。
2.計算等の特例(222条〜231条)
(1)義務
- 帳簿等の作成義務等
限定責任信託の受託者は、信託に関する財務状況を明らかにするため、会計帳簿、貸借対照表、損益計算書等を必ず作成しなければなりません。
- 公告
限定責任信託の清算において、清算受託者は、就任後遅滞なく、信託債権者に対し、一定の期間内(2か月以上)にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ知れたる信託債権者には、各別にこれを催告しなければなりません。
(2)責任
- 受益者への給付の制限および欠損責任
限定責任信託財における受益者に対する給付は、純資産額の範囲内で一定
方法により算定される金額を超えてすることはできません。この給付の制限に違反して財産が給付されたような場合には、受託者と受益者は連帯して、てん補しなければなりません。
- 受託者の第三者に対する責任
受託者は、信託事務を行うについて悪意・重過失があった場合には、これによ
って第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。
また、貸借対照表等の虚偽の記載等、虚偽の登記・公告をした場合も同様です。
3.限定責任信託の登記(232条〜247条)
(1)総則
- 管轄
限定責任信託の登記に関する事務は、限定責任信託の事務処理地を管轄する法務局もしくは地方法務局もしくはこれらの支局またはこれらの出張所が管轄登記所としてつかさどります。
- 登記の申請
登記の申請は、受託者(清算受託者)の申請によってなされます。
- 登記の添付書面
限定責任信託の各種の登記の添付書面は、それぞれの登記ごとに規定がされています。
- 商業登記法等の規定の準用
限定責任信託の登記について、商業登記法における「登記所および登記官」、「登記簿等」、「登記申請手続」、「本店移転・解散・更正および抹消登記手続」、「雑則」、民事保全法における「法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託」の各規定が準用されています。
(2)各種の登記
- 定めの登記
限定責任信託の定めがされたときは、受託者は、2週間以内に以下に掲げる登記をしなければなりません。
- 目的
- 名称
- 受託者の氏名または名称および住所
- 限定責任信託の事務処理地
- 信託財産管理者または信託財産法人管理人が選任されたときは、その氏名等、住所
- 会計監査人設置信託であるときは、その旨と会計監査人の氏名等
- 変更の登記
限定責任信託の事務処理地に変更があったときは、2週間以内に、旧事務処理地においてはその変更の登記をし、新事務処理地においては、限定責任信託の定めの登記をしなければなりません。 なお、同一の登記所の管轄区域内において限定責任信託の事務処理地に変更があったときは、その変更の登記をすれば足ります。
その他の登記事項について変更があったときも、2週間以内に、その変更の登記をしなければなりません。
- 終了の登記
限定責任信託が、信託の終了事由の発生や合意により終了したとき、または限定責任信託の定めを廃止する旨の信託の変更がされたときは、2週間以内に終了の登記をしなければなりません。
- 清算受託者の登記
限定責任信託が終了した場合において、限定責任信託が終了したときにおける受託者が清算受託者となるときは、終了の日から2週間以内に、清算受託者の氏名または名称および住所を登記しなければなりません。
- 清算結了の登記
限定責任信託の清算が終了したときは、信託事務に関する最終の計算に対する受益者の承認の日から、2週間以内に、清算結了の登記をしなければなりません。