平成19年4月1日より、新しい医療法人制度がスタートしました。この新制度では、これから設立する医療法人はもちろんのこと、すでに運営されている既存の医療法人についてもさまざまな影響があります。
そこで、第5次医療法改正による医療法人制度について留意すべき実務に関する情報を提供させていただきます。
第5次改正医療法の概要
医療法人の形態
社団医療法人の形態は、基本的に以下の4形態となります。
持分あり医療法人(既存通常型)
- 出資者には完全な持分があるため、残余財産は出資者に帰属します。
- 平成19年4月1日以降は設立できません。
- 出資額限度法人、基金拠出型医療法人へ移行することができます。
出資額限度法人(既存修正型)
- 出資者には持分はありますが、返還を受けられる額は出資額が上限となります。
- 平成19年4月1日以降は設立できません。
- 持分あり医療法人、基金拠出型医療法人へ移行することができます。
基金拠出型医療法人(改正通常型)
- 出資者には持分はありませんが、拠出額を限度として基金は返還されます。
- 平成19年4月1日以降に設立する医療法人は、原則として基金拠出型医療法人になります。
- 持分あり医療法人、出資額限度医療法人へ移行することはできません。
社会医療法人
- 出資者には持分はありませんし、拠出した資金の返還もなされません。
- 一般的には、公益性の高い大規模な医療機関向けです。
- 社会医療法人債の発行による資金調達ができます。
- 税務上の優遇措置が検討されています。
改正のポイント
その1 決算関係書類の変更
決算書類について、従来の財産目録、貸借対照表および損益計算書のほかに、以下の2つの書類の作成・提出が義務づけられました。
- 事業報告書(※)
- 監事の監査報告書
※ 事業報告書等の提出義務は平成19年4月1日以降に開始する会計年度から適用されます。
その2 役員に関する見直し
医療法人の適切な運営を確保する観点から、役員について以下のとおりに変更がなされました。
- 改正前は理事や監事の任期に制限がありませんでしたが、改正により2年以内とする任期規制ができました。なお、再任することは可能です。
- 監査報告書の作成が義務づけられる等改正により監事の監査機能が強化されました。
その3 事業報告書等閲覧制度の創設
過去3年分の事業報告書等が、誰でも閲覧することができるようになります。
この閲覧制度には、メリット、デメリットがあると思われますので、事業報告書等の記載には配慮が必要になると思われます。
その4 事業報告書等の提出期限の延長
従来は会計年度末から2ヶ月以内に都道府県知事等に決算関係書類を提出することとされていましたが、今後は、会計年度末から3ヶ月以内に提出することとなります。
その5 定款変更
今回の改正において、ほぼ全ての既存の医療法人は、定款の変更をしなければなりません。変更すべき事項は、社員総会に関する規定や監事の執務内容、事業報告書の作成等になります。
平成20年3月31日までに定時社員総会もしくは臨時社員総会の決議を経たうえで、各都道府県知事等に対して認可申請をしなければなりません。